インド亜大陸から少し海を隔てたところに位置するスリランカのセイロン島。
実はこの島、アダムスブリッジでインドとつながっているという。
いやいや、スリランカとインドって、対馬と韓国ぐらい離れてますよ。日本の技術力をもってしても、対馬から釜山に橋をかけるなんて無理でしょうに。これはいったいどういうことなのか。
今日も辞書を片手にブリタニカ百科事典を紐解く……
この記事はEncyclopedia Britannica(ブリタニカ百科事典)の記事Adam’s Bridge (shoals, India)からの引用を元に、独自研究を加えて自分なりの見解をまとめたものです。
目次
アダムスブリッジとは
アダムスブリッジ の概要
Adam’s Bridge, also called Rama’s Bridge, chain of shoals, between the islands of Mannar, near northwestern Sri Lanka, and Rāmeswaram, off the southeastern coast of India.
– Encyclopedia Britannica #Adam’s Bridge
shoal 浅瀬、砂州 coast 沿岸
つまり……ブリッジとはいっても、実際の橋ではなく、橋のようなもの、というニュアンスか。浅瀬のつながりをブリッジと呼んでいるってことは、もしやインドとスリランカの間って、実は浅瀬を歩いて渡れるのか。
アダムスブリッジ の位置
The bridge is 30 miles (48 km) long and separates the Gulf of Mannar (southwest) from the Palk Strait (northeast).
gulf 湾 strait 海峡
48キロって、対馬と韓国の釜山ぐらいの距離か。関東地方で例えると東京〜鎌倉間ぐらいの距離だね。アダムスブリッジが二つの海をseparateしてるってことは、やっぱりインドとスリランカって、実はつながってるんだぐらいのニュアンスだよなぁ。
アダムスブリッジの特徴
Some of the sandbanks are dry, and nowhere are the shoals deeper than 4 feet (1 m); thus, they seriously hinder navigation.
sandbank 砂州、砂丘 nowhere どこにもない shoal 浅瀬 thus 従って seriously 深刻に hinder 妨げる navigation 航行
水深1メートルじゃあ、漁船も通れないじゃないか。地図で遠目にみると、大型タンカーでも通れそうだけど、これはもう、インドとスリランカの間を船で通ろうなんて考えない方がよさそうだ。
頓挫したアダムスブリッジの水路開削計画
Dredging operations, now abandoned, were begun as early as 1838 but never succeeded in maintaining a channel for any vessels except those of light draft.
dredge (泥などを)さらい上げる abandone (中途で)やめる channel 水路 vessel 船 except 〜を除いて draft (船の)喫水
幅が48キロもあるのに、船が通れない水路ってどういうことよ。一番狭い場所が幅14キロジブラルタル海峡は言わずもがな、黒海から地中海に出るための(イスタンブールの)ボスポラス海峡ですら、幅が狭いところは1キロ未満しかないけど、大型船舶が通るための水深は十分にあるというのに。
しかも、アダムスブリッジって浅瀬だよね。ということは、スエズ運河やパナマ運河作るより、ずっと簡単な工事のはずだと思うんだ。
となると、お金の問題かなぁ。まあ、インドとスリランカの間の海を船舶が通過できるようになったからと言って、すごいメリットがあるとも思えないしなぁ。
アダムスブリッジ に対する地理学的見解
Geologic evidence suggests that Adam’s Bridge represents a former land connection between India and Sri Lanka.
suggest 暗示する represent 意味する former 以前の
地球温暖化の逆を行って、もし海抜があと1メートル強下がったら、インドとスリランカは完全に陸続きになるわけだな。ということは、氷河期あたりは完全に陸続きだったんだろうなぁ。
アダムスブリッジ に関する伝説
ヒンズー教の叙事詩、ラーマーヤナで語られるアダムスブリッジ
Traditionally, it is said to be the remnant of a huge causeway constructed by Rāma, the hero of the Hindu epic Rāmāyaṇa, to facilitate the passage of his army from India to Ceylon (Sri Lanka) for the rescue of his abducted wife, Sītā.
remnant 遺物 causeway 土手道 facilitate 容易にする passage 通過 army 軍隊
なるほど、地理学的にはもともと存在したものとして考えるけど、宗教的にはその指導者が創り出したもの、と考えられているわけか。
アダムスブリッジとアダムスピークに関するイスラムの伝説
According to Muslim legend, Adam crossed there to Adam’s Peak, Ceylon, atop which he stood repentant on one foot for 1,000 years.
muslim イスラム教徒 legend 言い伝え cross 渡る Adam’s Peak アダムスピークというスリランカにある山。山岳信仰で有名。 atop 頂上に stood(standの過去形)……の状態にある repentant 懺悔する
ああ、なるほど。アダムスブリッジのアダムって、誰のことかと思ったら、あの高名なアダムさんのことか。なんで聖書に出てきそうな人の名前がインドやスリランカに? と思ったけど、このアダムさんって、実はイスラム教のコーランにも登場してるらしい。そういえば、キリスト教のゴッドとイスラム教のアラーは同一のものを指してるんだよ、と昔聞いたことがあるなぁ……
さらに調べを進めてみると、なんとこのアダムスブリッジ、約500年前までは、本当に歩いて渡ることができたらしい。実はインドからスリランカって、歩いて行けたのか!
するといまはずいぶん中途半端な状態じゃないか。アダムスブリッジがあるから船が通れない。かといって人や車がこの橋を渡ることができるわけでもない。これはもしや、世界で一番役に立たない橋ってことではなかろうか。
でも、アダムスブリッジの水深って、深いところでも1メートルぐらいだよね。ということは、もしかして今でも歩いて渡れるんじゃないか。
かつて陸続き(だったと思われる)両国も、今やこんなに遠い国なんだなぁ。いや待て、幅34キロのドーバー海峡だって泳いで渡る人がいるんだから、深さ1メートルしかない上に、休める砂州や島が無数にあるこのアダムスブジッリ、歩いて渡れないわけがないような気がするが……誰も挑戦しないのか。
これ、絶対話のネタとして面白いと思うんだ。インドに旅行して、ついでに歩いてスリランカまで行ってきたんだ、なんて話をする人がいたら、耳を傾けざるを得ないとぼくは思うのですよ。