知ったかブリタニカ

東アジアに出没していたスペインのガレオン船って、インド洋を通って本国に交易品を持ち帰ってたんじゃないの?

日本史や歴史小説によく出てくる「南蛮船」。その代表的なものにガレオン船があった。昔、コーエーのゲーム「大航海時代」シリーズで、ガレオン船を揃えて敵対国や海賊の艦隊と交戦したり、インドに胡椒を買いつけに行ったりした記憶があるが、そもそもガレオン船というのは軍艦なんだろうか商船なんだろうか。白兵戦に備えて水夫をたくさん乗せると、自ずと水と食料もたくさん必要になって、交易品がほとんど積めないじゃん! って事態になった記憶があるが……そりゃそうと、なんで現実のガレオン船は東アジアくんだりまでやって来たんだ? インドで胡椒を買いつけてそのままヨーロッパに持ち帰るだけの方がコスパいいんじゃなかろか? その謎を解くため、今日も辞書を引き引き、ブリタニカ百科事典を紐解く……


ガレオン船
ガレオン船 いつも思うのだが、トイレはどこにあるのだろか……

ガレオン船についての概要

Galleon, full-rigged sailing ship that was built primarily for war, and which developed in the 15th and 16th centuries. 

– Encyclopedia Britannica #Galleon

full-rigged 全ての推進力が帆の sailing ship 帆船 primarily 主として

日本語訳

ガレオン船は、15世紀から16世紀にかけて開発された、主として戦闘用に建造された帆船である。

やっぱりガレオンは商船というよりは戦闘艦として建造されているのだ。ただ、primarily(主として)とある。つまり、それ以外の目的もあることがしっかりほのめかされている。通商行為もできる軍艦というニュアンスか。

“full-rigged sailing ship”(全ての動力が帆の船)という注釈みたいな表現は気になる。ということは、full-riggedじゃないsailing ship(帆船)もあるってことだ。こういう船のことだろう。


ギリシアのガレー船
帆もあるけど、人が漕いでいて全然full-riggedじゃないギリシャのガレー船
EDSITEment [Public domain], via Wikimedia Commons

ガレオン船の名前の由来と特徴

The name derived from “galley,” which had come to be synonymous with “war vessel” and whose characteristic beaked prow the new ship retained. 

derive 〜に由来する galley ガレー船(多数のオールで漕ぐタイプの船。映画「ベン・ハー」で主人公が漕がされている例のあの船) synonymous 同義の characteristic 特徴的な beak くちばし(状の) prow 舳先 retaine 保つ

日本語訳

ガレーという言葉はそのまま「戦闘艦」を意味するようになったが、ガレオンという名前もそのガレーに由来する。ガレーのとんがった舳先は、ガレオンでもその形をとどめている。

やっぱり基本的にガレオン船は軍艦なんだね。ただガレーと違うのは、帆走だから長距離航海ができるってことだ。

ガレオン船の用途

The largest galleons were built by the Spanish and the Portuguese for their profitable overseas trade; the famed “Manila galleons” of Spain made an annual trip between Acapulco, Mex., and the Philippines, carrying silver west and raw silk east, for more than 250 years.

Portuguese ポルトガルの profitable 儲けの多い overseas 海外の famed 〜で名高い annual 年一回の、例年の Acapulco アカプルコ。メキシコの都市の名前 Philippines フィリピン raw silk 生糸

日本語訳

最大級のガレオンは、ドル箱の海外交易のためにスペインとポルトガルで建造された。スペインの有名な「マニラガレオン」はメキシコのアカプルコとフィリピンの間を年一回往復し、250年以上に渡って銀を西へ、シルクを東へと運んだ。

大型のガレオンに関しては、武装商船というイメージなんだろうなぁ。この頃の遠洋航海では、まだ商船と軍艦の区別があいまいだったのだろう。自分の身は自分で守れということだ。

そしてスペインはその大型ガレオンで、メキシコの銀とフィリピンの生糸をトレードしていた、と。フィリピンの生糸というのは、もちろん、中国から集めた生糸をフィリピンで積み込んだ、ということだろう。なるほど、まさに海のシルクロードというわけか。

アイザップ
アイザップ
マニラからの積荷はフィリピンバナナじゃなくて中国のシルクだったんだね。

ん? ちょっと待てよ。”carrying silver west and raw silk east“ということは、メキシコの銀が「西」に運ばれて、フィリピンで積み込んだ生糸は「東」に運ばれたという意味だから……もしかして、メキシコのアカプルコって太平洋側の港なのか?

やっぱりそうか。スペインって日本のはるか西というイメージだったから、当然フィリピンで積んだ生糸はインド洋を経由してヨーロッパに届くものだと思い込んでいた。

でも違うんだ。生糸を手に入れるための対価である銀はメキシコで採れるから、銀はメキシコから西のフィリピンへ送られ、帰りの船で生糸は東のメキシコに運ばれた、というわけだ。

なるほど、話が見えてきた。

中南米を征したスペインが、フィリピンも領有していたのは、おそらく中国とメキシコをつなぐ航路が欲しかったからだ。

インド洋に拠点らしい拠点を持たないスペインが、なぜ東アジアにポツネンとフィリピンだけ領有していたのか長年不思議に思っていたが、これで謎は解けた。

それにしても、日本が戦国時代という名の内戦に明け暮れていた頃、すでにスペインは地球の裏側に定期航路を築いていたというわけか。

これ、立場を逆にして考えると、例えば織田信長がロンドンとニューヨークを往復する定期航路を築いて富を蓄えたとか、そういう次元の話だよなぁ。

アイザップ
アイザップ
かつては「太陽の沈まぬ国」なんて言われてたんだけどねぇ……

マニラガレオン記念碑
スペインは昔、北太平洋の覇者だった。地球の裏側に築いた海のシルクロード。 一般的に、海のシルクロードとはインド洋経由の航路と認識されているが、16世紀にはすでに北太平洋を横断する海のシルクロードも存在した。パ...
ABOUT ME
アイザップ
250年の歴史を持つブリタニカ百科事典(英語版)の記事を元に、個人的に興味深いと感じる無駄知識を世に広める伝道師。40代にして初めて正社員の職を得ることに成功し、その後、ぜんぜんできなかった英語にも手をつけ、やっとTOEIC 690点まで到達(2018年12月)。最近会社を辞め、いま流行りの青年失業家に転身。9月29日のTOEICで730点越えを目指して鋭意勉強中。