知ったかブリタニカ

豪華客船タイタニックの姉妹船オリンピック、Uボートを体当たりで撃沈す! (1918年)

豪華客船といえばタイタニック号が有名だが、実はそのタイタニック号には姉と妹がいた。タイタニックは氷山に衝突してたった5日で客船としての生涯を終えたが、その姉オリンピック号はその後に勃発した第一次世界大戦でも沈むことなくその天寿を全うした。そればかりか第一次世界大戦のさなか、彼女はなんと商船でありながらドイツのUボートを撃沈するという信じられないような武勲を立てる。豪華客船が潜水艦を撃沈するとはどういうことなのか。今日も辞書を引き引きブリタニカ百科事典を読み進める。

試験航海時のオリンピック号
試験航海時のオリンピック号
Maritimequest: Olympic page 4 [Public domain], via Wikimedia Commons

オリンピック号とは

タイタニックの姉として生まれたオリンピック

Olympic, in full Royal Mail Ship (RMS) Olympic, British luxury liner that was a sister ship of the Titanic and the Britannic. It was in service from 1911 to 1935.

– ENCYCLOPEDIA BRITANNICA #Royal Mail Ship Olympic

in full 略さずに luxury 豪華な liner 定期船 in service 運行している

日本語訳

オリンピック号、正確には王室郵船オリンピック号は、タイタニック号、ブリタニック号を姉妹船とする英国の豪華客船であった。運行期間は1911年から1935年であった。

ほう、あのタイタニック号には姉妹がいたのか。

Royal Mail Shipという表現も興味深い。

前から船会社の日本郵船ってなんで「郵船」なんだろうと思っていたが、語源はこのMail Shipというわけか。

それにしても、タイタニックって豪華「客船」だと思っていたけど、郵便船にカテゴライズされているのはなぜだろう。Passenger Shipじゃないんだなぁ。 

オリンピック号誕生の背景

To compete with the Cunard Line for the highly profitable transatlantic passenger trade, the White Star Line decided to create a class of liners noted more for comfort than speed. 

compete 競い合う Cunard Line キュナードライン社(現在クイーンエリザベス号を保有しているあの会社) White Star Line (ホワイトスターライン社)profitable 儲けの多い transatlantic 大西洋横断の passenger 旅客 class 種類 liner 定期船 note 特筆する

日本語訳

ドル箱の大西洋横断旅客業にてキュナードライン社に対抗するため、ホワイトスターライン社は速度よりも快適性を重視した定期船を作ることにした。

どうやら20世紀初頭の大西洋横断航路は活況だったようだ。飛行機は? と思って調べてみたら、ライトフライヤー号が飛んだのが1903年。

オリンピック号の就役はその8年後だから、まだ飛行機は旅客手段ではなかったということだ。


当時キュナード社のモーリタニア号は約5日で大西洋を横断できた

だんだん話が見えてきた。大西洋横断航路が盛況だった時代、あえてスピード競争から降りて、その代わりにゴージャス路線をとってライバル会社との住み分けを図ったというわけだ。

それにしても、この船でかい。

オリンピック号の仕様

It was also the largest, with a length of approximately 882 feet (269 metres) and a gross tonnage of 45,324. It could carry more than 2,300 passengers.

length 長さ approximately およそ gross (控除する前の)総体の(netの対義語。netは実質。このnetはよくお菓子のパッケージに書かれている。包装部分を除いた、お菓子の実質の重さという意味で) gross tonnage (船舶の)総トン数 passenger 乗客

日本語訳

オリンピック号は最大の船でもあり、全長約882フィート(269メートル)、総トン数は45324トン。そして2300人以上の旅客を乗せることができた。

おいおい、全長269メートル、総トン数45,324って、この大きさ、弩級戦艦の語源となったドレッドノート級の戦艦よりはるかにでかいよ。

アイザップ
アイザップ
ちなみに戦艦大和の全長は263メートルだから、長さは大和をも超えている!

他の客船との比較すると、例えばかつてシアトル航路で活躍し、いまは横浜に係留されている氷川丸が全長163.3メートル、総トン数11,622トン、旅客定員331名だから、オリンピック号がいかに大きな客船だったのかうかがい知れる。


山下公園に係留されている氷川丸
山下公園に係留されている氷川丸 左舷側から
掬茶 [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

アイザップ
アイザップ
野暮なツッコミだけど、見ての通り、氷川丸の煙突は1本、オリンピック号は4本……まあ、実はオリンピック号の4本目の煙突はただの飾り(フェイク)なんですがね。偉い人にはそれがわからんのですよ。

オリンピック号の歴史

英軍艦ホークとの衝突事件

In September 1911 during its fifth commercial voyage, the Olympic collided with the HMS Hawke near the Isle of Wight, southern England. It was later determined that suction from the Olympic had pulled the Hawke into the ocean liner

commercial 商業の voyage 航海 collide 衝突する determine 判決する suction 吸引

日本語訳

1911年9月の5回目の商業航海時、オリンピック号は英国南部のワイト島付近でHMSホークと衝突した。本件は後に、オリンピック号の誘引力によってホークがオリンピック号に引き寄せられたことによるものと結論づけられた。

RMSがRoyal Mail Shipなのに対して、HMSはHis (Her) Majesty’s ShipだからHMS Hawkはイギリスの軍艦。

客船が軍艦と衝突したらただでは済まない気がするが、”suction from the Olympic had pulled the Hawke into the ocean liner. “とある。

アイザップ
アイザップ
えっと、suction(吸引)? この単語、掃除機しか連想できないんだけど、船がダイソンみたいなするって、どういうこと?。

大型船が波を切って進むと、近くを通る軍艦が制御不能になるくらい強い水流が、船側に向かって発生するということなのだろうか。

たまたまその状況について詳しく説明をしている動画を見つけたので確認したところ、やはりそういうことだった。これには双方さぞ驚いたことだろう。


兵員輸送船時代

In 1915 the Olympic was requisitioned as a troop ship. 

requisition (とくに軍隊による)徴用 troop (軍隊の)部隊

日本語訳

1915年、オリンピック号は兵員輸送船として徴用された。

そんな豪華客船も、第一次世界大戦が始まると、兵員輸送船として徴用されることになる。

アイザップ
アイザップ
兵隊たちが戦場へ豪華客船で駆けつけるとは、これまたシュールな話だなぁ。

もっとも、ダズル迷彩を施されたオリンピック号の外見には、もはや豪華客船の面影はなかったが。

タイタニック号も氷山にぶつかって沈んでいなければ、こういう姿になっていたかもしれない。


迷彩を施されたオリンピック号
迷彩を施されたオリンピック号 海の貴婦人が痛々しい姿に 
maritimequest.com [Public domain], via Wikimedia Commons

アイザップ
アイザップ
このダズル迷彩(幻惑迷彩)って、派手だから逆に目立ちそうやん。

でも、大海原って、そもそも隠れる場所ないやん。だから隠匿(イントク)性を捨てて、魚雷の回避率向上を目的とした迷彩にしてるんだ。目の錯覚を引き起こすような迷彩塗装で船の進行方向や速度を敵に誤認識させて、魚雷攻撃の命中率を下げようってわけだ。

「当たらなけばどうってことはない」ってよく言いますしね……


病院船ブリタニック号
妹のブリタニック号 一度も商業航海に出ることなく病院船としてその短い生涯を終えた
Allan Green, 1878 – 1954 (see ) [Public domain], via Wikimedia Commons

1916年11月21日 ブリタニック号はUボートが敷設した機雷に接触してエーゲ海で沈没

Uボートに遭遇するも、これを撃沈

In May 1918 the Olympic sighted a German U-boat near the Isles of Scilly, England,

sight 視界に入れる

日本語訳

1918年5月、オリンピック号はイギリスのシリー諸島付近でドイツのUボートを視認し、

1918年5月、長女のオリンピック号もついに輸送船の天敵、Uボートに相見える。


Uボート(U-57)
オリンピック号の眼前に姿を現したU-103 と同型のU-57
Robert Wilden Neeser (1884-1940) [Public domain], via Wikimedia Commons

アイザップ
アイザップ
オワタ! 潜水艦や。

オリンピック号がU-103に遭遇した場所 イギリス近海ももはや安全な海ではなかった

商船に対潜装備などあるはずもなく、オリンピック号にできることといえば、なんとか魚雷を回避することぐらいだろうが……


and rammed and sank the enemy vessel.

rum 激しくぶつかる sank 撃沈した(sinkの過去形) enemy 敵の vessel 船

日本語訳

艦首で体当たりをして敵艦を海の藻屑と化した!

rammed and sankだと!? enemy vesselが指し示しているのはUボートのことだと思うが。

意味がわからず、何度か読み返した。

アイザップ
アイザップ
豪華客船がラムアタックで潜水艦を撃沈とな!

ラムアタックって艦首をぶつけて敵艦を沈めるあれだよね? いやいや、それちゃんと衝角(Ram)という武装が必要ですから。おたく、客船でしょ。

いくら4万トンの巨体だからといって、潜水艦と衝突したら、ただじゃ済まないでしょうに。

続きの文に目を凝らす。


The following year “Old Reliable,” as the liner was nicknamed, ended its military career. 

reliable 頼もしい

日本語訳

「頼もしいお婆ちゃん」とあだ名されたオリンピック号は、翌年軍務から退役した。

ブリタニカ、大事なところを何も書いてないじゃないか。しかも、就航から8年しか経ってないのに、「頼もしいお婆ちゃん」ってなんだい。イギリス人のセンスがわからん。それはさておき、どうやって商船が潜水艦を撃沈したんだ? それが知りたい。

Uボート撃沈の経緯

仕方ないので、wikipediaで調べる。こっちのが圧倒的に詳しかった。

wikipediaによると、

  • 1918年5月12日未明、オリンピック号が前方わずか500メートルの位置に浮上航行中のUボートを発見。
  • オリンピック号が砲撃(客船なので、大した火力じゃないと思うが)しながらUボートに突進。
  • Uボート側、魚雷攻撃を試みるも、2門ある艦尾魚雷の注水ができず、急速潜航。
  • オリンピック号の船体後部がUボート当たる。その際、オリンピック号の左側のスクリューがUボートの気密室を切断。

タイタニックのスクリュー
オリンピックの姉妹船タイタニックのスクリュー。これなら潜水艦の筐体をカチ割ることができるかもしれない。
Robert John Welch (1859-1936), official photographer for Harland & Wolff [Public domain], via Wikimedia Commons

  • Uボート、慌てて浮上し、生存者は脱出。艦は放棄。
  • オリンピック号、そのままフランスのシェルブールへ向かい、Uボートの生存者31名は米海軍駆逐艦USSデイヴィスが救出。
  • オリンピック号、船体の凹みと船首のねじれを抱えたまま、サウサンプトンに帰港。

ということらしい。まっとうな対潜装備がない以上、巨体を活かした体当たりで血路を開こうとしたところ、偶然、スクリューで会心の一撃ということのようだ。タイタニック号の姉さんは、戦史に残る武勇伝の持ち主だったのだ。

オリンピック号の晩年

Despite competition from larger ships, the Olympic remained a popular vessel, making frequent Atlantic crossings. On May 15, 1934, in a heavy fog, the Olympic struck and sank the Nantucket lightship, a boat that was positioned to mark the shoals near Cape Cod, Massachusetts. Seven of the 11 crewmen aboard the lightship were killed, and the Olympic was later blamed for the accident. In April 1935 the Olympic was retired from service. It was later sold for scrapping, and many of the fixtures and fittings were bought and put on display by various establishments, notably the White Swan Hotel in Alnwick, Northumberland, England.

despite 〜にもかかわらず competition 競争 remain 存続する frequent たびたびの Atlantic 大西洋の fog 霧 cape 岬 struck 衝突した(strikeの過去形)lightship 灯台船 position 位置する、固定する mark 示す shoal 浅瀬 crewmen 乗組員 aboard (船などに)乗って blame 非難する fixture 備品 fittings 家具類 various さまざまな establishment(学校・ホテル・会社・病院などの)設立物 notably とりわけ Northumberland (イギリスの)ノーサンバーランド州

日本語訳

より大きな船との競合があったにもかかわらず、オリンピック号は人気のある船であり続け、あまたの大西洋横断をこなした。1934年5月15日、濃霧の中でオリンピック号はコッド岬付近の浅瀬を示すための灯台船ナンタケットに衝突し、これを沈めてしまった。ナンタケットに乗船していた乗組員11人のうち7人の命が失われ、オリンピック号は後にその事故で批難を浴びた。1935年4月、オリンピック号は退役した。そして、後にスクラップとして売却され、備品や家具は、英国ノーサンバーランド州アニックのホワイトスワンホテルを主とした様々な施設に買われて、展示された。

こうして、オリンピック号はその四半世紀に渡る生涯を閉じた。

20世紀初頭、大西洋航路を華やかすはずだった三姉妹のうち、タイタニックとブリタニックは1年と存えることができなかったが、長女オリンピックだけが、約四半世紀の天寿を全うすることができた。

しかし長きにわたって築き上げてきた栄光の影で、彼女は重い事故を引き起こしてしまった責に苦しみながら、失意のうちに解体処分を迎えた……

アイザップ
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(`・ω・´)ゞ

解体所に移された客船オリンピック(左)とモーリタニア(右)
MaritimeQuest [Public domain], via Wikimedia Commonsw

速度の速いモーリタニア(キュナード社 写真右)に対抗するため、オリンピックは快適さを重視して設計された。長年にわたって大西洋航路でライバル同士だった二隻が、一緒になって解体を待つ姿が哀愁を誘う。

最後に、White Swan Hotelに残されているという、オリンピック号の遺品を紹介する動画があったので、紹介させていただきたい。

かつて大西洋航路を賑わせた豪華客船の面影が偲ばれる。

ABOUT ME
アイザップ
250年の歴史を持つブリタニカ百科事典(英語版)の記事を元に、個人的に興味深いと感じる無駄知識を世に広める伝道師。40代にして初めて正社員の職を得ることに成功し、その後、ぜんぜんできなかった英語にも手をつけ、やっとTOEIC 690点まで到達(2018年12月)。最近会社を辞め、いま流行りの青年失業家に転身。9月29日のTOEICで730点越えを目指して鋭意勉強中。