知ったかブリタニカ

盆栽の町「大宮」はかつて埼玉県の県庁所在地だった!? ブリタニカが語るさいたま観

埼玉県民にとって、大宮といえば埼玉県のニューヨークといったところで、一番栄えている都市ではあるが、県庁所在地は別だったという認識が一般的である。ところが、ブリタニカ百科事典が語るところによると、大宮はかつての県庁所在地だったという。どういうことなのか。今日も辞書を引き引きブリタニカ百科事典を読み進めていく。

大宮駅
埼玉のニューヨーク、大宮
Andshin [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

さいたま市の概要

さいたま市の成り立ち

Saitama, capital of Saitamaken (prefecture), east-central HonshuJapan. Situated in the southeastern part of the prefecture, the city was created in 2001 through the merger of the former cities of Urawa, Yono, and Ōmiya. 

– Encyclopedia Britannica #Saitama(Japan)

prefecture 県 situate 位置する merger 合併 former 以前の

日本語訳

さいたま市は日本の本州の東部中央に位置する埼玉県の県庁所在地で、2001年に浦和市、与野市、大宮市が合併してできた。

平成の大合併により、さいたま市ができたのはもう18年前のことだったか。ぼくは当時、埼玉県民のセンスだから新市名は「彩京市」になるのではないかと思っていたが、現実はぼくの想像の斜め上をいき、ひらがなの「さいたま市」となった。

アイザップ
アイザップ
ちなみに埼玉県の雅称(ガショウ)は「彩(サイ) の国」なんだ……

Saitama, capital of Saitamaken (prefecture), east-central HonshuJapan.”漢字を知らない外国人がこの文を読んだ時、最初の”Saitama,”と次に出てくる”Saitamaken “がまったく異なる表記だなんて、想像すらしていないだろう。

そういえば、同じ埼玉県内の春日部市でも、かつての宿場町として栄えた地域は粕壁という異なる表記だから、その地域の住所は春日部市粕壁だ。

それにしても” east-central HonshuJapan.”という表記はなかなか興味深い。日本人だったら、わざわざ日本の「本州」のなんて言い方はしないだろう。

でも逆の立場だったら、例えば日本人がマニラを説明するときは、フィリピンの「ルソン島」の、という説明の仕方をするかもしれない。


さいたま市の位置を示す地図
彩の国の心臓部、さいたま市
ja: 利用者:Lincun [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

さいたま市の位置

It lies near the northern limit of the Tokyo-Yokohama metropolitan area, about 20 miles (32 km) north of central Tokyo.

lie 横たわる  metropolitan 大都市の、首都の central 中央の

日本語訳

さいたま市は京浜首都圏の北限付近、東京中心部の北側約20マイル(32キロ)に位置する。

今のぼくの英語力で、ほほうと感じるのが動詞”lie”の用法だ。中学生の頃「横たわる」と教わった単語だ。

“lie”が「横たわる」で”lay”が「横たえる」。

中学のとき、セットで教わったが、「横たわる」と「横たえる」はどう違うのかと先生に聞いても、苦笑いするだけで答えてもらえなかったことをふと思い出した。

Britannicaを読んでいると、よくこの”lie”という動詞が「…に位置する」という用法で使われているのを見かける。最近この使われ方がだんだんしっくりくるようになってきた。

次が問題の一節だ。

大宮と浦和

大宮はかつての県庁所在地だった!

Ōmiya, formerly the prefectural capital and now the northern portion of Saitama city, and Urawa, the southern part of the new city, were roughly equal in size at the time of the merger. 

formerly 以前は prefectural capital 県庁所在地 portion 部分 roughly ざっと

日本語訳

かつての県庁所在地で、今はさいたま市の北部を占めている大宮と、南部を占める浦和は、合併時ほぼ同じ大きさだった。

“Ōmiya, formerly the prefectural capital “とな? いや、そんなはずないでしょう。さいたま市ができる前、埼玉県の県庁所在地は浦和だったはず。

浦和の前に実は大宮が県庁所在地だったことがあったのではないかと思ってググってみるが、そんな事実は出てこない。

アイザップ
アイザップ
おっっしゃぁぁぁぁ! ブリタニカ百科事典の間違いを発見したで!

ぼくには元埼玉県民としての高い埼玉リテラシーがあるという優位性があったとはいえ、天下のEncyclopedia Britannicaに知識で勝ったのだ!

コメットハンターが未知の彗星発見した時のような気分、とでも言おうか。

大宮と浦和の歴史

Both had been post towns on the Nakasendō highway between Ōsaka and Edo (Tokyo) during the Tokugawa period(1603–1867), and both grew rapidly in the 20th century, especially after World War II

post town 宿場町 highway 幹線道路 Tokugawa period 徳川時代(江戸時代)

日本語訳

大宮と浦和は共に、江戸時代(1603-1867)は大阪と江戸(東京)をつなぐ中山道の宿場町で、いずれも20世紀、とりわけ第二次大戦後に急速に発展した。

“post town”は「宿場町」か。ポスト…ポスト…(サッカーの)ゴールポスト……もしかして、このpostって馬をつなぐ柱を意味していて、だから「宿場町」=”post town”なんじゃないかと推測して調べてみると、”post”という単語の原義は「替え馬の置いてある宿場」と辞書にある。ビンゴ!

さらに調べを進めると、古い用法ではあるが、動詞としてのpostには「早馬で旅をする」とか「急行する」という意味があるらしい。早馬といえば、現在の速達郵便だ。だから”post”は郵便用語になっているのか。

「ワシントンポスト」みたいに、新聞社の名前として使われる理由も、なるほど理解できる。情報を持った早馬が集まる場所ってイメージか。

その次の”the Nakasendō highway”ってなんだこれ。

アイザップ
アイザップ
江戸時代の中山道ハイウェイ!?

一瞬、飛脚や早馬が時速100キロぐらいで行き交う様子が頭に浮かんだが、なんのことはない、辞書によると”highway”とは「幹線道路」のことで、日本人の「高速道路」=「ハイウェイ」という認識が間違っているということのようだ。

高速道路はexpressway, freeway, motorwayなんて言い方をするらしい。

このhighwayという単語、”highway to 〜”で比喩的に「〜への近道」、とか「〜の王道」という意味にも使われるようだ。

そういえば、「トップガン」という映画で流れている「デンジャーゾーン」という曲の歌詞にも”highway to the denzer zone”というフレーズがあったし、日本語でも、「〜への特急券」みたいな言い方があるよなぁ。


木曽街道大宮宿の浮世絵
中山道ハイウェイの大宮ポストのポストカード
Keisai Eisen [Public domain], via Wikimedia Commons

大宮の氷川神社

The Shintō Hikawa Shrine in Ōmiya ward is thought to have been established in the 5th century AD. 

shrine 神社 ward 区

日本語訳

大宮区にある神道の氷川神社は5世紀に作られたと考えられている。

大宮について、氷川神社に言及しているところが、いかにも百科事典っぽい。

大宮といえば氷川神社と連想する埼玉県民はそんなに多くないんじゃないかな。ちなみに、横浜に係留されている氷川丸の名前はこの氷川神社に由来しているらしい。

“Ōmiya ward”は「大宮区」。文脈から”ward”が「区」を意味することは想像できたが、最初はwordと混同していた。気をつけねば。


氷川神社拝殿
氷川神社 拝殿
Ocdp [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

大宮と浦和の特徴

 The Ōmiya area is renowned for its many bonsai (dwarf-tree) nurseries (first established there in the mid-1920s), and the Urawa vicinity includes a wild-primrose garden and a heron sanctuary. 

renowned 〜で有名な dwarf 小人 nursery (子供や植物や魚を)育成する場所 vicinity 近隣地 primrose サクラソウ heron サギ sanctuary 保護区域

日本語訳

大宮地区は多くの盆栽育成所(この地に最初にできたのは1920年代半ば)があることで有名で、浦和近隣には野生のサクラソウ園とサギの保護区域がある。

大宮が盆栽で有名というのは、日本人ですらあまり知らないだろう。

埼玉育ちのぼくだって、大人になってからテレビでそう紹介されているのを見て初めて知ったくらいだ。目のつけどころが渋いぞブリタニカ。

だけどそこまで調べがつくのに、なぜ県庁所在地レベルの情報をまちがえるか。

大宮盆栽村に住むためには「盆栽を10鉢以上持つこと」など厳しい掟をクリアしなければならない

それにしても、盆栽のことを”dwarf-tree”と説明しているところがおもしろい。

ドワーフって、よくファンタジー作品に出てくるあの背の小さい伝説上の種族のことでしょ、と思って調べてみると、確かにそうなんだけど、語源をさかのぼると、そもそもその「ドワーフ」より先にもともと「小さきもの」という意味があったようだ。

dwarf-○○という表現は最近だと、2006年に冥王星(pluto)が惑星(planet)から降格される際に、準惑星(dwarf planet)という新定義を示すのに使われている。

smallとdwarfはどう違うのだろうかと考えてみたところ、あくまで推測だが、どうもdwarfは単にサイズが小さいだけではなく、小さい結果あえて別扱いする時に使うような気がするが……。

ちなみに、冥王星を意味する名詞plutoはその後、「降格」を意味するスラングとして動詞的に使われるようになったそうだ。(今でも使われているかはわからないけど)


太陽系の図
2006年 冥王星は準惑星へ降格(pluto)させられた
Riffsyphon1024 at en.wikipedia [Public domain], via Wikimedia Commons

おいおい、大宮の話がいつの間にか宇宙にまで広がっちゃったよ。大宮のポテンシャルすごいな! さすが天下のブリタニカに元県庁所在地と間違われるだけはある。

Encyclopedia BritannicaのHPに”Contact Us”というサイトがあるので、「埼玉県の旧県庁所在地は大宮じゃなくて浦和だよ」と伝えれば、修正してくれそうだけど、修正されてしまったら、この記事の意味が半分ぐらい失われてしまうよなぁ……。

アイザップ
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そもそも、ブリタニカ百科事典のSaitamaなんて項目を読んだことある人、世界で何人いるやら……

ABOUT ME
アイザップ
250年の歴史を持つブリタニカ百科事典(英語版)の記事を元に、個人的に興味深いと感じる無駄知識を世に広める伝道師。40代にして初めて正社員の職を得ることに成功し、その後、ぜんぜんできなかった英語にも手をつけ、やっとTOEIC 690点まで到達(2018年12月)。最近会社を辞め、いま流行りの青年失業家に転身。9月29日のTOEICで730点越えを目指して鋭意勉強中。