大西洋を中心とした欧米世界の地図から見ると、世界の最果てにあるように見えるニュージーランド。その国鳥は、翼なき鳥キーウィ。キウィフルーツの語源となった、あの鳥だ。
しかし、飛べないはずのキーウィであるが、当地では国の空を守る象徴とされているという。これはどういうことなのか。
そもそも、翼がないのに鳥とはこれいかに!? 今夜も辞書を片手にブリタニカ百科事典を紐解く……
この記事はEncyclopedia Britannica(ブリタニカ百科事典)の記事Kiwi (bird)からの引用を元に、独自研究を加えて自分なりの見解をまとめたものです。
目次
飛べない鳥、キーウィとは
キーウィの分類学的な位置づけ
Kiwi, any of five species of flightless birds belonging to the genusApteryx and found in New Zealand.
-Encyclopedia Britannica #kiwi-bird
Kiwi キーウィ【鳥】 any of いずれか species (動植物分類上の)種 flightless (鳥が)飛べない genus (動植物分類上の)属 Apteryx キーウィ(キーウィ属の種の総称)
「属」とか「種」とかってのは、つまりさ、ライオンはネコ科の動物っていうじゃない、それのことだよ。ライオンはネコ科ヒョウ属ライオン。最後のライオンが「種」の名前。
で、結局キーウィというのは、キーウィ属っていう飛べない鳥のカテゴリーがあって、その下位分類として5つの種があるよっていうことだ。
キーウィの名前の由来
The name is a Maori word referring to the shrill call of the male.
Maori マオリ族 referring to〜 〜を意味する shrill 甲高い male 男性
male(男性)の金切り声? female(女性)じゃなくて? すごくステレオタイプな想像で恐縮だけど、アパッチの雄叫びみたいな、あのイメージなのだろうか。
キーウィとモア(すでに絶滅)との関係
Kiwis are grayish brown birds the size of a chicken. They are related to the extinct moas.
grayish 灰色がかった brown 茶色の related to 縁戚 extinct 絶滅した moa モア(という絶滅したニュージーランドに生息していた羽根のない巨大な鳥。恐鳥。)
キーウィの特徴
キーウィの翼・鼻・クチバシ・脚
Kiwis are unusual in many respects: the vestigial wings are hidden within the plumage; the nostrils are at the tip (rather than the base) of the long, flexible bill; the feathers, which have no aftershafts, are soft and hairlike; the legs are stout and muscular; and each of the four toes has a large claw.
unusual 普通ではない、変わった in … respect 箇所、点 vestigial 退化した plumage (鳥の)羽 nostril 鼻の穴、鼻孔 tip 先端 base (指や鼻の)つけ根 flexible 弾力的な bill クチバシ feathers 羽毛 aftershaft 後羽 hairlike 毛のような stout 丈夫な muscular 筋骨隆々 toe 足指 claw かぎ爪
うん、まあ、クチバシと足のかぎ爪を見るに、鳥の仲間だよなぁ。「羽毛はやわらかくて毛のようだ」と書かれているから、この体毛に見えるものは一応、羽毛と呼ぶんだろうなぁ。翼はないと思ってたけど、実はこの羽毛のなかに退化した翼が隠れてるってことか。
キーウィの目・耳・ヒゲ
The eyes are small and inefficient in full daylight, the ear openings are large and well developed, and very long bristles (perhaps tactile) occur at the base of the bill.
inefficient 役に立たない daylight 昼光 bristles 剛毛 tactile 触知できる occur 存在す bill クチバシ
ということは、キーウィは夜行性ということか。ん? 鳥が夜行性? ああ、そういえばフクロウなんかもそうか。あいつら、森の奥深くでいつも夜ふかししながら哲学してるイメージあるもんなぁ。
クチバシのつけ根から生えてるbristles(剛毛)っていうのは、いわゆるヒゲのことだろう。
そして、そのヒゲがおそらく触知できるというのは、つまり、猫のヒゲと同じような機能があると思われる、ということだ。
キーウィの生態
Dwelling in forests, kiwis sleep by day in burrows and forage for food—worms, insects and their larvae, and berries—by night. They can run swiftly when required; when trapped they use their claws in defense.
dwelling すみか by day 日中は burrow 巣穴 forage 餌をあさる worm (細長くて柔らかい脚のない)虫、蠕虫 insect 昆虫 larvae 幼虫、幼生【larvaの複数形】 berry (魚やエビの)卵 swiftly 迅速に trap (困った状態に)追い込む
wormというのは、ミミズやイモムシみたいな、ニョロニョロしたやつのことだね。食べ物はわりと普通の鳥っぽいな。かぎ爪で身を守るというのは、シャモみたいにジャンプキックをかますこともある、ということなのだろう。
キーウィの絶滅危惧について
Although no longer abundant, kiwis appear to be in no danger of extinction and may even be gradually adapting to semipastoral land.
no longer もはや…ない abundant (あり余るほど)豊富な extinction 絶滅 adapt 順応するpastoral 牧畜の
うーん、この”semipastoral land”というのは、半牧畜的な土地ってことだからつまり、生態系を守るために外来種を人為的にブロックした自然保護区のようなニュアンスなんだろうなぁ。ニュージーランド人の努力の結果、絶滅の危機は免れている、ということなのだろう。
キーウィとニュージーランド人
ニュージーランドの国鳥であり、象徴としてのキーウィ
なるほど、キーウィの概要はこれで把握できた。姿も愛くるしいし、ニュージーランドの固有種であることも考えると、同国の国鳥としての資質は十分にあるだろう。
そればかりか、kiwiという単語を英和辞典で調べてみると、一番目の意味は鳥のキーウィだが、たいてい二番目ぐらいには「ニュージーランド人」と書かれている。それほどキーウィ=ニュージランドなのだ。
ニュージーランドの大空を守るキーウィたち
ちなみに彼らがどれくらキーウィなのかというと、国の空を守るはずのニュージーランド空軍の国籍識別マーク(軍用機の翼に書かれているあの丸いやつ)までキーウィのマークなのだ。お前さん、空飛べないだろうに。
ぼくの知る限り、ニュージーランド空軍のラウンデルが、世界で一番弱そうな国籍識別マークである。鳥なのに飛べないばかりか、地上でも絶滅が危ぶまれたくらい弱いでしょうに……
【参考】主な国々の国籍識別マーク(ラウンデル)
おや、よくみると、ニュージーランドにはセンスのよく似たお仲間さんがいるではありませんか。ロシアのマークは丸くないからラウンデルとはいわないかも……基本的にはどの国も、自分の国のナショナルカラーを使って、直感的にどの国かわかるデザインにしてるみたいだね。ニュージーランドとオーストラリアはどちらも英連邦だから、イギリスのラウンデルの真ん中の赤い部分だけ、その国を象徴する動物の形にして区別をしている、ということだろう。うん、まあ、南太平洋は平和なんだろうなぁ。