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内陸国ボリビア海軍の基地をさがせ

ボリビア海軍 ルレナバケ ‐ サン・ブエナ・ベンウーラの主要港の本部の写真

19世紀に起こった太平洋戦争(硝石戦争)の結果、太平洋岸の領土を失い、海なし国となってしまったボリビア。

しかし、ボリビアは海をあきらめてはいなかった。

チチカカ湖で、アマゾン川で、ボリビア海軍はきょうも大洋を夢みて活動を続けているというが…

そもそも内陸国ボリビアに海軍がある理由

海がないはずの内陸国ボリビアに海軍がある。

こんな話を耳にしたのは、いまから十数年前だったような気がする。

調べてみると、その背景はせつないものだった。

実は、19世紀後半、太平洋戦争(硝石戦争)が起こる前までは、ボリビアは太平洋に面した地域にも領土を持っていた。

太平洋戦争(硝石戦争)前の国境
太平洋戦争(1879-1884)前の地図。ボリビアの領土が太平洋岸にまでつながっている様子がうかがえる。第二次大戦中の太平洋戦争と区別するため、こちらの大平洋戦争は硝石戦争と呼ぶこともある。太線は現在の国境。Createaccount / CC BY-SA

しかし、太平洋沿岸の資源地帯をめぐって、ペルー・ボリビアの連合軍とチリと間で戦争が起こり、チリ側が勝利。

結果、ボリビアは太平洋沿岸の領土を失い、内陸国となった。

このとき1884年。日本だと明治17年のことだから、そんな古い話でもないんだ。

それでもボリビア海軍が存続している理由

沿岸部の領土を失ったボリビアであるが、このとき、海軍は解散されなかった。

武力で不当にぶんどられた(と思っている)海岸線なのだ!

ボリビアでは毎年3月23日を「海の日」と定め、この海岸領土問題を常に喚起している。

ボリビア海軍は、いつか再び太平洋に出る日のために、いまも内陸でひそかに力を蓄えているのだ!

けなげな話じゃないですか。

ボリビア海軍の基地をさがせ

とはいえ、海がないのに、いったいどこで活動しているのか。

答えは簡単だった。湖や川である。ボリビアには、南米最大のチチカカ湖や世界最大の流域面積を誇るアマゾン川がある。

海軍というより水軍…と思わずツッコみたくなるが、ボリビア海軍は、湖で、川で、きょうもボリビアの水域を守るために活動しているのだ。

というわけで、さっそくそのボリビア海軍の基地を探すべく、Webの海を捜索してみるのだが、調査は難航した。

なぜか?

坊やだから

なにせ調査対象は内陸国ボリビアの海軍なのである。その戦力なんて、だれが気にしようか。

当然、情報が少ないのに加えて、その少ない情報がスペイン語だったかと思えば、flashが使われるほど古いサイトだったりして、なかなか有力な情報にたどりつけない。

マジで情報なくて泣けてくる。

それでも、苦心の末、ついにボリビア海軍の現状を示唆する一枚の決定的写真を発見した。

それが、これだ!

ボリビア海軍 ルレナバケ ‐ サン・ブエナ・ベンウーラの主要港の本部の写真
「ボリビア海軍 ルレナバケ ‐ サン・ブエナ・ベンウーラの主要港の本部」と書かれているようだがこれは… Dave Bezaire & Susi Havens-Bezaire / CC BY-NC-SA

これが、ボリビア海軍の拠点だと…

ルレナバケはボリビアの首都ラパスから北北東へ約400キロの位置にある都市で、アマゾン川の源流の一つであるベニ川に接している。

サン・ブエナ・ベンウーラはベニ川をはさんでルレナバケの対岸にある都市だ。

ルレナバケへ行くには、首都ラパスから飛行機で1時間、もしくはバスで18時間。約420キロの道のりに18時間もかかる当地の道路事情は推して知るべし。ここはまさに秘境なのだ。

ルレナバケとは、どんなところか。

ためしにラパスから飛行機に乗って、ルレナバケへ行ってみたとしよう。

距離にして東京から名古屋ぐらいだ。あっという間に着く。

しかし、着陸する場所はこんなんだ。

ルレナバケ空港の滑走路
ルレナバケ空港の滑走路(2008)。この空港の滑走路が舗装されたのは、いまから10年前(2010)のことだという。Dave Bezaire & Susi Havens-Bezaire / CC BY-NC-SA

ここはラバウルか!

そして、空港の建物がこれ…

ルレナバケ空港の管制塔
ルレナバケ空港の管制塔と空港ビルそのもの…だと思われる(2008)。確かに建物にちゃんと「ルレナバケ空港」と書いてあるが…大型のパラボラアンテナがいい味を出している。Dave Bezaire & Susi Havens-Bezaire / CC BY-NC-SA

いやぁ、いくらなんでもこれ…と思うので、Googleマップのストリートビューで裏をとってみることにした。

この建物の裏面と思しきポイントを発見。

ストリートビューの画像は2016年のもの。上掲の2008年の写真とは建物の色が違うが、建物の形状、門の位置、門の付近にある特徴的な大型パラボラアンテナなどから、同じ建物と考えて間違いないだろう。

まさに秘境!

飛行場がこれなら、海軍基地(という名の河川警備拠点)がかやぶき屋根なのも理解できるというものだ。

ちなみに、このアマゾン川の源流であるベニ川での「海軍」の活動は、主として密輸や麻薬取引を防ぐためのパトロールだという。

しかし、このアマゾン川の源流にあるとされる、かやぶき屋根の海軍拠点だけでは物足りない。

もうちょっと海軍っぽい場所を探して、南米最大の湖、チチカカ湖の湖岸を捜索。

チチカカ湖岸の都市、グアキ。このあたりに、ボリビア海軍の基地があるという話だが…

チチカカ湖岸の都市、グアキの標高は約3900メートル。

富士山の山頂よりも高い場所に海軍基地があるとは、にわかに信じがたいが、ここはアンデス山脈の東側を領土に持つボリビアである。

標高3,600メートルの場所にサッカースタジアムがあるんだから、標高3,900メートルの場所に海軍基地があったとしても、なんの不思議もないだろう。

かくして、チチカカ湖岸のグアキ港を捜索していたところ、ついにボリビア海軍の軍艦旗が掲揚されているスポットを発見。

ボリビア国旗(右上)の下にはためくボリビア海軍の軍艦旗(右下)。左の旗はウィファラという、先住民を象徴する旗である。
ボリビア海軍の軍艦旗
【参考】ボリビア海軍の軍艦旗
Own work / Public domain

ワレ、ボリビア海軍ノ主力艦艇ヲ発見ス

港に停泊している船舶のなかから軍艦らしきものを探してみるが、あるのは小型のボートばかり。

別のポイントからグアキ港に停泊中の船舶を探してみたところ、レジャーボートにしては物々しい雰囲気の船舶を2隻発見。艦尾にはボリビア国旗。

グアキ港に係留されているボリビア海軍の哨戒艇 LP-435アントファガスタ。

艦番LP-435、これは…ボリビア海軍の主力艦、アントファガスタだ。ということは、その後ろにいるのは同型艦のLP-436カラマだろう。(なぜ船名までわかるかというと、ここに書いてあったのだ。)

ボリビア海軍はこのアントファガスタ、カラマを含め、計6隻のType 928 YC哨戒艇(中国製)を有している。

どうやらこれらの船が現在のボリビア海軍の主力であるようだ。

それにしても、アントファガスタとかカラマって名前、これ、ボリビアじゃなくてチリの地名だと思われ…あ、いや、もしかして!

アントファガスタは太平洋に面するチリの都市。カラマはそこから北東に200キロの位置にある内陸都市。

やっぱりそうだ。

いずれも、かつての太平洋戦争(硝石戦争)でボリビアがチリにぶんどられた地域の都市の名前だ。

この戦争で海に面する領土を失ったボリビアの海軍は、その後今日まで、湖沼や河川でひっそりとその命脈を保ってきたが、やはり太平洋をあきらめてはいなかったようだ。

ボリビア海軍はチチカカ湖で、アマゾンの源流で、いつか来るであろう捲土重来の日を夢見ながら、きょうも密航・密輸・麻薬取引などを防ぐための活動に従事しているのだ…

マジレスすると、太平洋戦争(硝石戦争)のときにチリの海軍を迎え撃ったのは、ボリビア海軍じゃなくてペルー海軍。

ボリビア海軍はどうしてたの?

ボリビア海軍は当時(明治12年)、ちゃんとした軍艦を持ってなかったんだよ。

いまと同じじゃん。

軍艦がなくっても

いいじゃないか

ボリビアだもの

まじお