バーチャトラベル

南米の最果てでペンギンを捕獲する旅

ペンギンの写真

ペンギンといえば南極と思いがちだが、実は南極と動物園以外にもペンギンは存在するという。

というわけで、今回は南極にほどなく近いアルゼンチンの最南端、マゼラン海峡付近へペンギンをゲットする旅に出た。

取材班がそこで見たのは、リアル「ペンギン村」だった!

そもそも南極以外にペンギンはいるのか

いまから30年以上前の話だったと思うが、アニメの「ルパン三世」に、ルパン一味が南極のペンギンを北極に運ぶシーンがあり、それを見てはじめて、ペンギンは北極にいないという事実を知った。

それから長い年月を経て、ある日とつぜん思いついた。

南極以外にも南極に近いところだったらペンギンはいるのかもしれない、と。

たとえば、南米の南端とか、南米の南端とか、南米の南端とか。

この辺、かなり南極に近いよ。

南アメリカの南端と南極の北端 実はかなり近い

かつてドイツの気象学者アルフレート・ヴェーゲナーは、世界地図を眺めているうちに大陸移動説を思いついたといわれているが、それから一世紀後、日本のプロフェッショナルジョブハンターであるぼくは、世界地図を眺めているうちに、ペンギンは南極以外にもいるのではないかと思うに至った。

幸い、21世紀の今日、それを調査するために船を手配する必要もなければ、探検隊を編成する必要もない。

必要なのは、真理を探究せんとする情熱と、ネットサーフィン検定3級程度の知識のみ。

まずは南極と南アメリカの南端との最短距離を測ってみる。

約1,000キロ。

なんのことはない。東京から博多までと同じくらいの距離だ。

魚なら十分泳いでいける距離だろう。

しかし、ペンギンはいくら泳ぎがうまいといっても、しょせん奴らはトリだ。つまり、肺呼吸しているので、1,000キロ泳いで南アメリカまでたどりつけるほどの航続距離を有しているかと問われれば、おそらくその答えはノーだ。

だがこうも考えられよう。

ペンギンがまだ鳥類としてのアイデンティティーを保っていたころ、つまり、泳ぎよりも飛ぶことのが得意だった時代に、空を飛んで南米にたどりついていたかもしれない、と。

マジレスすると、いまでも空を飛べるペンギンはいるらしい。【下の動画参照】

BBCによって激写された、空飛ぶペンギン

そうやって、泳ぐなり空を飛ぶなりして、南アメリカの南端、マゼラン海峡付近のどこかにたどり着いたペンギンはいないか、Googleマップで調査を開始することにした。

パタゴニアにてリアルペンギン村を探せ

というわけで、南アメリカの南端、パタゴニア地方の調査をするわけだが、まずはこの地域の概要から。

パタゴニアの地図
オレンジ色のエリアがパタゴニア地方。アンデス山脈をはさんだ、アルゼンチンとチリのおおよそ南緯40度以南の地域を指す。

上図の通り、南米における緯度40度以上の高緯度地域を指して、パタゴニアと呼ばれている。

まぎらわしいけど、南半球だと「高緯度」ってのは、地図の上側じゃなくて下側のことなんだ。

緯度40度といえば、日本でいえば青森県ぐらいの緯度である。パタゴニアの南端は南緯55度ぐらいであるから、こちらは日本近辺に例えれば、樺太の北端(北緯54度)とほぼ同じくらいの緯度ということになる。

南米大陸の南端は、樺太の北端と同じくらいの緯度に位置している

そのため、パタゴニアは寒い。むっちゃ寒い。

しかしここでひとつの疑問がわく。中学の地理の授業で、このように習わなかっただろうか。

「南半球に亜寒帯(冷帯)は存在しない」と。

ぼくの記憶では、確かに中学生のとき、そのように習ったと記憶しているのだけど、いくらなんだって樺太と同じような緯度にある地域なのに寒くないわけがない。

「南半球に亜寒帯(冷帯)はない」っていうから、南アメリカの先っちょでもそこそこ暖かいと思っていた頃もありました…

ケッペン気候区分図で確認してみよう。

南米のケッペン気候区分図
パタゴニアの大部分は乾燥帯(B)のエリアであると確認できる。 Peel, M. C., Finlayson, B. L., and McMahon, T. A.(University of Melbourne) / CC BY-SA

大部分がサーモンピンクのBWk。これは、低温砂漠気候というやつだ。

砂漠というと、砂とラクダを思い浮かべがちだが、実際のところ、世界の砂漠のうち、そういうベタな砂砂漠すなさばくは2割程度で、残りはいわゆる岩石砂漠や礫砂漠れきさばくといった乾燥した荒れ地である。

ちなみに、BWkを囲むようにして分布しているベージュのBSkはステップ気候。砂漠ほどではないものの、乾燥していて木が育たず、背丈の低い草が生えるのみである。(モンゴル高原みたいなところ)

このパタゴニア地域が低温乾燥帯になるのは、偏西風に乗って太平洋からやってくる雨雲の多くが、アンデス山脈によってさえぎられてしまい、結果的に冷たく乾燥した風が吹き荒ぶだけの荒野となってしまっているからである。

しかもその風がむっちゃ強い。群馬の赤城おろしを3倍速にしたくらいのイメージ。

アルゼンチンの国道40号線
パタゴニアを縦貫する国道40号線。延々と荒野が続いている様子がうかがえる。 Giacomo Miceli / Public domain

一方、亜寒帯(冷帯)というのは、北海道を思い起こしていただければいいのだが、寒くても樹木は育つだけの湿度はあるのだ。

パタゴニアの場合、樹木の育成に必要な気温はあっても、湿度が足りないため乾燥帯と区分され、北海道のような亜寒帯(冷帯)とはならない。

そして、パタゴニアの南端までいくと、今度は乾燥の問題とは別の理由による無樹林気候、つまり、最暖月の平均気温が10℃以下の「寒帯(ツンドラ気候・氷雪気候)」というカテゴリーに分類されるようになる。

したがって、南アメリカに「亜寒帯(冷帯)」が存在しないといわれているのは、寒くないからではなく、「亜寒帯(冷帯)」と呼ぶには乾燥しすぎているから、ということになる。

中学のときの先生、そこまで説明してくれなかったぞ…

ついに発見、リアルペンギン村

さて、それでは、アメリカ大陸で南極に一番近い場所を捜索してみようと思う。

マゼラン海峡を擁するティエラ・デル・フエゴ諸島。

アメリカ大陸の南の果て ティエラ・デル・フエゴ諸島

ちなみに、南半球の海には緯度ごとに「吠える40度」「狂う50度」「叫ぶ60度」という俗称がある。

これ、ずいぶん中二病的なネーミングだよなぁ。

これは、南半球では緯度40度から70度台までほとんど陸地がなく、したがって風をさえぎるものがないことから、強烈な偏西風に襲われるためである。

ティエラ・デル・フエゴ諸島は南緯55度。「狂う50度」のど真ん中だ。

パナマ運河が完成する前は、海路でアメリカ大陸を超えるためには、こんな海を渡らねばならなかったのである。

しかし、こんな人を寄せ付けない南海の荒海なら、いるかもしれない、ペンギンさん。

世界最南端の都市、ウシュアイア近辺の小島を捜索してみると…。

ディエラ・デル・フエゴ諸島のペンギン様ご一行

いた! ペンギン様ご一行! しかも団体さんだ。

やはりペンギンは南極大陸だけではなく、南極にほど近い南米にも生息していたのだ。

南米というと、なんとなく熱い場所というイメージを抱きがちだが、実はその最南端はペンギンが住むほど寒い場所だったのである。

「ウシュアイア 世界の果て」と書かれた看板
「ウシュアイア 世界の果て」と書かれた看板 W. Bulach / CC BY-SA

それにしてもすごい数のペンギンさんだ。上掲のストリートビューで見る限り、手を伸ばしてさわることもできそうだけど…野生動物にさわっちゃだめですよね、やっぱり。

ところで、空飛ぶペンギンってほんとにいるの?

いるわきゃない。あれはBBCのエイプリルフール動画だよ。