氷の国、アイスランドに住む人はアイスクリームを食べるのだろうか。
オーロラを眺めながら食すアイスクリームというのもなかなかオツなものだろう。
そんなわけで、果たしてアイスランドにアイスクリーム屋はあるのか、実際に調べてみた。
アイスランドの中心でアイスくれと叫ぶ
人はなぜアイスクリームを食べるのか。
この
たとえば、である。キンキンに冷えたビールを飲みたくなるのは夏だ。寒空の下であれを飲みたいとはあまり思わない。
しかしながら、では真冬にビールを飲まないかというと、そんなこともなく、暖かい部屋で鍋をつっつくなら、やはり冷えたビールがほしいところである。
ということは…だ。たとえばアイスランドのように、名前からして寒そうな国であっても、実は暖炉の前でアイスクリームを食べるのが好きな人がいて、それなりにアイスクリームの需要があるのではなかろうか。
その仮説を検証すべく、さっそくアイスランドの首都、レイキャビクにアイスクリーム屋はあるのか調べてみた。
ところでそもそもアイスランドは温帯であるという件について
というわけでアイスランドについて調べてみたところ、のっけから飛んでもない情報が飛び込んできた。
まずはこれを見てほしい。
マジかよ。アイスランドの首都レイキャビクって温帯だったのか。いやいや、ここ、北緯64度ですよ。北緯64度って、アラスカのアンカレッジ(北緯61度)より北ですから。
しかも、西岸海洋性気候(温帯)とガチ寒帯のツンドラ気候が隣り合っているですよ。中間にあるはずの亜寒帯がすっ飛ばされてるヘンタイ気候。
ほとんど寒帯のツンドラだけど、気まぐれにちょっとだけ暖かいところもあるという伝説の気候区分、ツンデレ気候ってやつだ。
温帯では寒い国の例としてアイスランドを持ち出す意味がないではないか、と思われる方もいるかもしれないので、補足を。
アイスランド沿岸部が温帯扱いなのは、植生分布で気候を区分しているケッペン気候区分マジックのなせる業で、「最寒月平均気温が-3℃ 以上18 ℃未満、最暖月平均気温が10℃以上」ならば温帯扱いになるからなのだ。
たとえば首都レイキャビクの場合、真冬でも平均最低気温は-2℃どまり。そして、真夏の平均気温はかろうじて10℃を超えてくるので、ケッペン気候区分上はぎりぎり「温帯」なのだ。(夏がむっちゃ涼しくて、冬は寒いけど極寒というわけではないということ)
真夏は札幌の5月・6月ぐらいのイメージ。
夏でも最高気温が10℃ちょいなら、一般的な(日本の)感覚でいえば十分寒い。こんな気温でアイスクリームを食べたくなるとも思えないので、やはり調べてみる価値はありそうだ。
潜入! レイキャビク
というわけで、さっそくアイスランドの首都レイキャビクの街の様子を調べてみた。
するといきなりとんでもないものが…
くどいようだが、ここは北緯64度のほぼ北極圏。真夏の7月でも平均最高気温は15.5度にすぎない。
日本の小中学校におけるプール授業実施基準は気温+水温が45℃以上のことが多いが、その基準に照らし合わせると、水温は30℃ということになるが、そんなはずもなく…
これは、アイスランド人の寒さ耐性を甘く見積りすぎていたのかもしれない。これならビーチでアイスクリームを食べるぐらい、当たり前の光景なのかもしれない。
アイスクリーム屋を探せ
というわけで、アイスランドの首都レイキャビクにて、アイスクリーム屋を捜索してみた。
すると、いきなり複数ヒット!
まあ、落ち着こう。ターゲットはアイスクリームもメニューにあるレストランとかじゃなくて、バリバリのアイスクリーム屋だ。
あの金属のタッパーみたいなやつにアイスクリームが詰め込まれていて、それをアイスディッシャー(アイスクリームを半球の形ですくう、スプーンみたいな道具)ですくってお皿やコーンにのせてくれるような、本格アイスクリーム屋。
ここは北緯64度のほぼ北極圏。北太平洋でいえば、ロシアとアラスカを隔てるベーリング海峡のど真ん中。
ええ、ふつうにありましたね。アイスクリーム屋。
しかもこのアイスクリーム屋のホームページによると、「当店では、新鮮で オーガニックでできる限り地元の素材を使っています」とのこと。
Ice Cream Bases:
Icelandic milk – definitely helps to make “fresh made” experience even more complete.
Coconut milk – delicious dairy free alternative for any ice cream that you choose.
アイスクリームに使用している牛乳は「アイスランドミルク」と…
たぶんこういうことだろう。アイスランドはほぼ北極圏なので、農業といえばいわゆる畑作ではなく、寒冷地でもできる酪農が主体になってくる。(日本でも牛乳といえば北海道だ)新鮮な牛乳がたくさんあるのなら、牛乳が原料のアイスクリームも作りたくなるよね…ということか。
なるほど、それはわかる。しかし、その次のココナッツミルクってなんだろう。これは熱帯地方の特産品だと思うが…
これは、”dairy free alternative”とあるから…乳製品の代替品か。つまり、どのアイスクリームにも、牛乳のかわりにココナッツミルクを使ったものをご用意できますよ、ってことだ…
どういうこと?
Everything is gluten free, anything can be made vegan.
すべてグルテンフリーで、すべてヴィーガン向けに作ることもできるとな?
あーなるほど。牛乳のかわりにココナッツミルクを使うアイスクリームは、肉だけではなく乳製品もとらないヴィーガン向けメニューということか。
ヨーロッパではベジタリアン食やヴィーガン食がわりと市民権を得ているという話は聞いたことがあるが、ここアイスランドですよ。寒すぎてほとんど野菜がとれず、カロリー摂取の大部分を動物由来の食糧に依存していたと思われるこの国に、動物由来の食糧を一切拒絶するヴィーガンがいて、アイスクリーム屋ですら「すべて」ヴィーガン向けにカスタマイズできるというから驚きだ。
ぼくにとっては、もっと享楽的な施設のひとつに感じられるアイスクリーム屋ですら、ここまで意識が高いとは…
お値段の方はどうなんだろう。
サイズ プライス 1 SCOOP 550kr 2 SCOOP 900kr 3 SCOOP 1200kr 1/2 LITER 1490kr 1 LITER 2590kr
1 SCOOPというのは、アイスディッシャー1杯分ということだよな。半球状のアイスクリームの塊がひとつという意味だろう。そして、お金の単位のkrはアイスランド・クローナで、ざっくり計算で1アイスランドクローナは0.8円だ。(2020年3月現在)
ということは、アイスひと塊の一番小さいやつが550krとあるので、だいたい440円ぐらいか。まあそんなもんだろう。
しかも、その1リッターのお値段は2590krだから、日本円にして約2000円ぐらい…
いくらアイスランドだからって、1度に2000円分ものアイスを食べられるのか? 1リッターですよ、1リッター。おなか壊しちゃうよ。
たとえグルテンフリーでもデイリーフリー(乳製品不使用)でも、これはぜったいに健康によろしくないと思いますぞ。
ん、まて、これは…
SUGAR FREE サイズ プライス 1 SCOOP 590kr 2 SCOOP 950kr 3 SCOOP 1250kr 1/2 LITER 1590kr 1 LITER 2690kr
シュガーフリーのアイスクリームもあるのか…
ということはさ、牛乳のかわりにココナッツミルクを使ったヴィーガン仕様のアイスクリームを、さらにノンシュガーにして1リットル頼むということもできるわけだ。
お値段日本円換算で約2,100円也。
アイスランドのアイスクリームは半端なかった
というわけで、ほぼ北極圏という極北に位置する国であるにもかかわらず、牛乳を材料とするアイスクリームは地産地消という観点からもどうやら人気の食べ物であるらしいことがわかった。(少なくとも、メニューに1リッターサイズなんて載せられるくらいには)
一方、健康志向によるものなのか、あるいはもっとスピリチャルな理由によるものなのか、いずれにせよデイリー(乳製品)フリーやシュガーフリーに積極対応するなど、ぼくの中のアイスクリーム屋のイメージの斜め上を行く「意識の高さ」を思い知らされる結果となった。
アイスランドのアイスクリーム。アイスランドに行った際には、ぜひ挑戦してみていただきたい。アイスランドでデイリーフリー・シュガーフリーのアイスクリームを1リッター食べてみた感想、お待ちしております。
アイスランドはヴィーガンフレンドリーなお店が多いらしいんだ。
多様性に対して寛大なんだと思う。日本もそういうところ、もちっと見習いたい。
でも捕鯨国ってことは、鯨肉を食べる人もたくさんいるんだよね。